渋谷のランドマークとして親しまれている「109(マルキュー)」。
この特徴的な円筒形の建物を見て、「なぜ109という数字なの?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、この「109」という数字には、日本の大企業グループの誇りが込められているのです。
「とう=10」「きゅう=9」東急の数字遊び
109の正式名称は「SHIBUYA109」ですが、この「109」という数字は東急グループの社名から来ています。
「とう=10」「きゅう=9」という語呂合わせで「東急(とうきゅう)=109」となるのです。
東急グループとは?
東急グループは、1918年に創業された東京急行電鉄を中核とする大手企業グループです。
鉄道事業から始まり、現在では:
- 鉄道(東急電鉄)
- 不動産(東急不動産)
- 百貨店(東急百貨店)
- ホテル(東急ホテルズ)
- エンターテイメント(東急レクリエーション)
など、多岐にわたる事業を展開しています。
1979年、ファッションビルとしての誕生
SHIBUYA109は1979年に開業しました。
当時の渋谷は、まだ今のような若者の街ではありませんでした。
むしろ「大人の街」というイメージが強く、若者向けのファッションビルは珍しい存在でした。
なぜ「109」という名前にしたのか?
東急グループが「109」という名前を選んだ理由は:
- ブランドアイデンティティ: 東急グループの一員であることを明確にする
- 覚えやすさ: 数字3桁で覚えやすく、印象に残りやすい
- 国際性: 数字は言語を超えて理解される
開業当初は「大人向けブティック」も多く入居していましたが、徐々に若者向けのテナントが増えていきました。
渋谷ギャル文化の聖地へ
1990年代に入ると、109は「渋谷ギャル文化」の聖地として位置づけられるようになりました。
109系ブランドの誕生
- EGOIST(エゴイスト)
- RIENDA(リエンダ)
- MOUSSY(マウジー)
- SLY(スライ)
これらのブランドは「109系」と呼ばれ、日本の若い女性のファッションを牽引しました。
特に:
- 派手な色使い
- 体のラインを強調するシルエット
- アクセサリーとの組み合わせ
が特徴的で、海外からも「Harajuku Fashion」として注目されるほどでした。
海外から見た「SHIBUYA109」現象
興味深いことに、海外では「109」を「One-Oh-Nine」として認識されることが多く、日本独特の語呂合わせは伝わりにくいとされています。
海外観光客への影響
しかし、その独特な円筒形の建物と「109」という数字の組み合わせは、海外からの観光客にとって:
- 視覚的なランドマークとして機能
- Instagram映えする建物として人気
- 日本のポップカルチャーの象徴として認識
されるようになりました。
デジタル時代への適応
2000年代以降、ファッション業界はデジタル化の波に直面しました。
109も例外ではありません。
オンライン戦略の展開
- 109公式アプリの開発
- SNSマーケティングの強化
- インフルエンサーとのコラボ
- ライブコマースの導入
これらの取り組みにより、「109」というブランドは物理的な建物を超えた存在になっています。
「109」が生み出した経済効果
SHIBUYA109の成功は、渋谷エリア全体に大きな経済効果をもたらしました。
数字で見る109効果
- 年間来館者数: 約3,000万人(ピーク時)
- テナント数: 約120店舗
- 経済波及効果: 推定年間500億円規模
特に若い女性の消費行動に与えた影響は計り知れません。
現在も続く「109」ブランドの進化
2024年現在、SHIBUYA109は開業から45年を迎えています。
時代の変化に合わせて:
新しい「109」の取り組み
- サステナブルファッションの推進
- 多様性を重視したブランドの誘致
- 体験型コンテンツの充実
- 海外展開の検討
など、常に時代に合わせた進化を続けています。
まとめ:語呂合わせから始まった文化現象
「109」という数字は、東急グループの「とう(10)きゅう(9)」という単純な語呂合わせから始まりました。
しかし、この数字は日本のファッション文化、若者文化、そして渋谷という街そのものを象徴する存在になったのです。
単なる数字が、これほどまでに大きな文化的影響を与えた例は、世界的に見ても珍しいケースと言えるでしょう。
次回渋谷を訪れた際は、この「109」という数字に込められた歴史と文化を思い出してみてください。
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