家に帰ったときに言う、
「ただいま!」
あまりにも当たり前の挨拶ですが、よく考えてみると不思議な言葉です。
「いま」は「今」だとしても、
「ただ」って何?
と思ったことはないでしょうか。
「ただの人」
「料金はただ」
などの「ただ」と同じなのでしょうか。
実は、帰宅の挨拶の「ただいま」は漢字で書くと、
「只今」
です。
もともとは「今この時」「まさに今」という意味を表す言葉で、帰宅したときの「ただいま」は、
「ただいま帰りました」
という言葉が短くなったものとされています。
何気ない挨拶の中に、昔から使われてきた「時間を表す日本語」が残っていたのです。
「ただいま」の「ただ」にはどんな意味がある?
「ただいま」は漢字では「只今」または「唯今」と書きます。
辞書では、「只今」は「いま」を強めた言葉と説明されています。
つまり、
ただ+今=まさに今、この瞬間
という感覚です。
現在でも、
「ただいま準備中です」
「ただいまの時刻は午後3時です」
「ただいま戻りました」
などと言いますね。
この「ただいま」はすべて、「今」「今この時」という意味を強めています。
そのため、帰宅時の「ただいま」にある「ただ」は、
「無料」という意味の「ただ」
ではありません。
「今」を強く示すために使われている言葉なのです。
「只今」という言葉自体は非常に古く、平安時代の『蜻蛉日記』や『源氏物語』などにも用例が確認されています。
(参考サイト:コトバンク「只今」)
なぜ「ただいま」が帰宅の挨拶になったの?
もともとの「ただいま」は、帰宅専用の言葉ではありません。
「現在」
「たった今」
「今すぐ」
など、時間を表す普通の言葉でした。
では、どうして家に帰ったときの挨拶になったのでしょうか。
「ただいま帰りました」が省略された
辞書では、帰宅時の「ただいま」は、
「ただいま帰りました」の略
と説明されています。
つまり、もともとは家に戻ったとき、
「ただいま帰りました」
と伝えていたものが、次第に最後の部分が省略され、
「ただいま」
だけで帰宅を知らせる挨拶になったわけです。
(参考サイト:コトバンク「只今」)
「今、帰ってきました」という報告だった
言葉の意味をそのまま考えると、
「ただいま帰りました」は、
「まさに今、帰ってきました」
という報告です。
現在では「ただいま」と言えば、聞いた側も自動的に、
「帰ってきたんだな」
と理解します。
しかし、もともとは「今帰りました」という普通の文章だったと考えると、「ただいま」という挨拶の形も納得しやすくなります。
「ただいま」は昔から帰宅の挨拶だった?
「只今」という言葉そのものは、平安時代から使われていました。
ただし、最初から現在のような帰宅の挨拶だったわけではありません。
辞書に掲載されている古い用例を見ると、「ただいま」はまず、
「現在」
「今すぐ」
「つい今しがた」
といった時間を表す言葉として使われています。
帰宅時の挨拶としての用例は、それより後の時代に確認されています。
精選版日本国語大辞典では、帰宅時の挨拶として使われる「只今」の例として、江戸時代後期の文献が紹介されています。
つまり、
時間を表す「ただいま」
↓
「ただいま帰りました」という表現
↓
帰宅時の「ただいま」
という流れで挨拶として定着していったと考えられます。
(参考サイト:コトバンク「只今」)
「ただいま」は現在・過去・未来にも使える?
「ただいま」という言葉がおもしろいのは、「今」だけを表すとは限らないところです。
辞書では、大きく分けて現在・少し前・すぐ後の3つの時間を表します。
現在を表す「ただいま」
「ただいま営業中です」
「ただいまの気温は20度です」
この場合は、そのまま「現在」という意味です。
少し前を表す「ただいま」
「ただいま帰ってきました」
という場合は、
「つい今しがた帰ってきた」
という、非常に近い過去を表します。
すぐ後を表す「ただいま」
飲食店などで、
「ただいまお持ちします」
と言うことがあります。
この場合は、
「今すぐ」
「まもなく」
という近い未来を表しています。
同じ「ただいま」なのに、
過去
現在
未来
のすべてに使えるのです。
共通しているのは、どれも**「今という瞬間に非常に近い」**ということです。
(参考サイト:コトバンク「只今」)
「たった今」と「ただいま」は関係ある?
「ただいま」と似た言葉に、
「たった今」
があります。
「たった今帰ってきた」
「たった今電話があった」
などと言いますね。
実は「たった今」は、「ただいま」が音変化した言葉とされています。
辞書でも「たった今」は、「ただいま(只今)」の変化した語と説明されています。
つまり、
「ただいま」
↓
「たったいま」
という関係です。
普段は別の言葉として使っているように見えますが、もともとはかなり近い言葉だったのです。
(参考サイト:コトバンク「たった今」)
英語には「ただいま」と同じ言葉がある?
日本語では家に帰ると、
「ただいま」
と言い、それに対して、
「おかえり」
と返すのが定番です。
では英語にも「ただいま」とまったく同じ挨拶があるのでしょうか。
英和辞典では、帰宅時の「ただいま」にぴったり一語で対応する英語はなく、
「I’m back.」
「I’m home.」
などが使われると説明されています。
つまり、
「私は戻りました」
「家に着きました」
という形で表現します。
考えてみれば、日本語の「ただいま」も元をたどれば、
「ただいま帰りました」
という文章でした。
短くなりすぎて、今では一語の挨拶のように感じるだけなのです。
(参考サイト:コトバンク「只今」和英辞典)
「ただいま」と「おかえり」がセットなのはなぜ?
「ただいま」と言われると、反射的に、
「おかえり」
と言いたくなります。
この二つは、現在ではほとんどセットの挨拶です。
「ただいま」は、
「今、帰りました」
という帰宅した側の言葉。
それに対して「おかえり」は、
帰ってきた人を迎える側の言葉
です。
つまり、片方は帰宅の報告、もう片方はそれに対する応答になっています。
「おかえり」がなぜ帰宅した人への挨拶になったのかについては、別の記事で詳しく見ていきます。
→ 「おかえり」は、なぜ帰ってきた人に言うの?(準備中)
「ただいま」は「今帰りました」が一言になったものだった
普段、何気なく使っている「ただいま」。
その「ただ」は、無料を意味する「ただ」ではありません。
「ただいま」は漢字で「只今」と書き、
「まさに今」「今この時」
という意味を持つ言葉です。
そして帰宅時の「ただいま」は、
「ただいま帰りました」
が短くなったものとされています。
もともとは、
「今、帰ってきました」
というごく普通の報告だったのです。
それが長い年月の中で「ただいま」だけになり、現在では家に帰ったときの挨拶として定着しました。
毎日何気なく言っている「ただいま」ですが、実は「今この瞬間」を伝える古い日本語が、そのまま現代の家庭に残っている言葉だったのです。
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