食事を終えたら、何気なく口にする「ごちそうさま」。
子どものころから当たり前のように使っていますが、よく考えてみると不思議な言葉です。
「ごちそう」は豪華な料理のことだから、「おいしい料理でした」という意味?
……と思いきや、実は少し違います。
「ごちそうさま」を漢字で書くと「御馳走様」。
この中にある「馳走(ちそう)」という言葉には、もともと走り回る、あちこち駆け回るという意味がありました。(参考サイト:コトバンク)
なぜ「走り回る」という言葉が、食事のあいさつになったのでしょうか。
調べてみると、「ごちそうさま」には食事を作る人だけではなく、食卓に料理が届くまでに関わった人たちへの感謝が込められていました。
「ごちそうさま」の「ちそう」とは何?
「ごちそうさま」は漢字では、
御馳走様
と書きます。
ポイントになるのが、真ん中の「馳走」です。
「馳」という漢字には、馬などを速く走らせる、駆けるという意味があります。「馳走」も、もともとは走り回ること、奔走することを表す言葉でした。(参考サイト:コトバンク)
現在では「ごちそう」と聞くと、
寿司
焼肉
ステーキ
豪華な料理
といったものを想像する人も多いでしょう。
しかし、もともとの「馳走」は「豪華な料理」という意味から始まった言葉ではありません。
誰かをもてなすために、食材を探したり、料理を用意したりしてあちこち走り回ることを表していたのです。
農林水産省も、「馳走」は走り回って用意するという意味から、もてなしを表すようになったと説明しています。(参考サイト:農林水産省)
なぜ「走り回る」が「豪華な料理」という意味になったの?
昔は、現在のようにスーパーへ行けば何でもそろうわけではありません。
客人を迎えて食事を振る舞おうと思えば、
食材を集める
魚や野菜など、その日の食事に必要なものをそろえなければなりません。
今のように冷蔵・冷凍された食材をいつでも買える時代ではないため、料理を用意すること自体に大きな手間がかかりました。
料理を作って客をもてなす
集めた食材を料理し、客人のために食事を整えます。
こうして相手のために走り回り、心を込めてもてなすことが「馳走」と呼ばれるようになりました。
さらに、その「もてなし」で出される料理そのものも「馳走」「御馳走」と呼ばれるようになり、現在の「ごちそう=立派な料理」という意味につながっていきました。(参考サイト:コトバンク)
つまり、
走り回る
↓
相手のために奔走する
↓
心を込めてもてなす
↓
もてなしの料理
↓
ごちそう
という変化があったわけです。
「ごちそう」という言葉の裏側には、料理そのものよりも、誰かのために準備する手間が隠れていたのです。
「ごちそうさま」の「さま」は誰のこと?
ここでもう一つ気になるのが、
「様」
です。
「ごちそう“さま”」というくらいですから、誰かを「様」と呼んでいるようにも見えます。
しかし、「御馳走様」は特定の誰か一人に対する呼びかけというより、もてなしへの敬意や感謝を込めた表現として定着したものです。
辞書でも「御馳走様」は、馳走になった人が礼として述べる言葉で、多くは食事の後のあいさつとして使われるとされています。(参考サイト:コトバンク)
つまり、「料理がおいしかったです」だけではなく、
「ここまで用意してくださって、ありがとうございました」
という気持ちが含まれていると考えると分かりやすいでしょう。
「ごちそうさま」は誰に感謝している?
現代では、食事を作った人に向かって「ごちそうさま」と言うことが多いですよね。
ただ、食事が目の前に並ぶまでには、実際にはたくさんの人が関わっています。
食事を作った人
まず思い浮かぶのが、料理を作ってくれた人です。
家庭なら家族、飲食店なら料理人やスタッフなどです。
材料を用意し、調理し、食べられる状態にしてくれた人への感謝です。
食材を作り、運んだ人
野菜を育てた農家、魚を獲った漁師、家畜を育てた人、食品を加工した人、商品を運んだ人などもいます。
私たちは普段、その人たちの姿を見ることはほとんどありません。
それでも、その誰かの仕事がなければ食事は食卓に届きません。
農林水産省も「いただきます」「ごちそうさま」を、食べ物や食に関わる人たちへの感謝を表す言葉として紹介しています。(参考サイト:農林水産省)
食べ物そのもの
日本の食事のあいさつでは、食材や命への感謝も大切にされてきました。
肉や魚はもちろん、野菜や米も、自然の中で育ったものです。
そう考えると「ごちそうさま」は単なる食後の決まり文句ではなく、一回の食事の向こう側にあるものを意識する言葉ともいえそうです。
「いただきます」と「ごちそうさま」はセットなの?
日本では、
食べる前に「いただきます」
食べ終わったら「ごちそうさま」
という組み合わせが定番です。
ただし、二つの言葉はまったく同じ意味ではありません。
「いただきます」は、これから食事を受け取るときの言葉。
「ごちそうさま」は、食事が終わったあと、用意してもらったことへの感謝を表す言葉です。
「いただきます」の意味については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
→ なぜ「いただきます」を言うの?日本の食事マナーに隠された深い意味
食事の前後にそれぞれ感謝を表す言葉があるのは、改めて考えてみるとなかなか興味深い文化ですね。
豪華じゃない料理でも「ごちそうさま」でいい?
もちろん大丈夫です。
現在の「ごちそう」には「豪華な料理」「ぜいたくな食事」という意味もありますが、「ごちそうさま」の由来を考えると、料理が豪華かどうかは本質ではありません。(参考サイト:コトバンク)
おにぎり一個でも、みそ汁一杯でも、それを作るまでには誰かの手間がかかっています。
むしろ「御馳走」のもともとの意味を考えると、
高価な料理だからごちそう
なのではなく、
自分のために用意してくれたものだからごちそう
という考え方のほうが、言葉の成り立ちには近いのです。
何気ない「ごちそうさま」に意外と深い意味があった
普段何気なく言っている「ごちそうさま」。
その「ちそう」は漢字で「馳走」と書き、もともとは走り回る、奔走するという意味を持つ言葉でした。
客人をもてなすために食材を集め、料理を用意する。
そのために走り回る姿から「馳走」が「もてなし」を意味するようになり、やがて料理そのものも「御馳走」と呼ばれるようになったのです。
そう考えると、
「ごちそうさま」
という短い一言の中には、
「自分のためにここまで用意してくれてありがとう」
という気持ちが隠れていることが分かります。
いつもの食事のあいさつも、由来を知ってから口にすると、ちょっと違って聞こえてくるかもしれません。
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