電話に出ると、つい自然に口から出てくる「もしもし」。
「もしもし、聞こえますか?」
「もしもし、お世話になっております」
あまりにも当たり前なので気にすることはありませんが、よく考えると少し不思議な言葉です。
そもそも「もし」って何なのでしょうか。
英語なら「Hello」なのに、なぜ日本では「もしもし」なのでしょう。
実は「もしもし」は、電話のために突然生まれた意味不明な言葉ではありません。
そのルーツをたどると、日本語の「申す」という言葉につながっていきます。
しかも、日本で電話が使われ始めたころには「もしもし」ではなく、「おいおい」と呼びかけていたという話も残っています。
今回は、電話で「もしもし」と言うようになった理由と、意外な歴史を見ていきましょう。
「もしもし」の「もし」って何?
「もしもし」は、「もうしもうし」が変化した言葉とされています。
「もうし」は漢字で書けば「申し」。
つまり「言う」の謙譲語である「申す」につながる言葉です。
現在でも、
「申し上げます」
「申します」
などと使いますよね。
「もしもし」は、もともと相手に声をかけるときの「もうし、もうし」という表現が変化したものとされています。
実際、「もしもし」という呼びかけそのものは、電話が登場するよりずっと前から使われていました。
辞書には、16世紀末の文献にも「もしもし」にあたる用例が確認されています。
つまり、
電話が発明されたから「もしもし」という言葉が生まれた
わけではないのです。
もともと日本語にあった呼びかけの言葉が、後になって電話でも使われるようになったと考えると分かりやすいでしょう。
(参考サイト:コトバンク )
日本で電話が始まったころは「もしもし」じゃなかった?
ここがおもしろいところです。
日本で電話が使われ始めた明治時代、最初から誰もが「もしもし」と言っていたわけではなかったようです。
電話草創期について調べた図書館の資料では、当時の男性交換手が「おいおい」などと呼びかけていたという記録が紹介されています。
今の感覚で電話を想像すると、
「おいおい、聞こえるか?」
と電話口で言っていたようなものです。
かなり雰囲気が違いますね。
男性は「おいおい」と呼びかけていた
電話が日本に普及し始めたころ、男性交換手の間では「おいおい」という呼びかけが使われていたとされています。
まだ電話そのものが珍しく、電話専用のあいさつも定着していなかった時代です。
そのため、対面で人を呼ぶような感覚で電話でも声をかけていたのでしょう。
「もしもし」が広まっていった
一方で、「おいおい」という言い方は少々ぶっきらぼうです。
そこで「もしもし」という言い方が使われるようになり、次第に電話の呼びかけとして定着していったとされています。
ただし、「誰が最初に電話で『もしもし』と言い始めたのか」については複数の説があります。
ある技師が考案したという説、女性交換手たちが使い始めたという話、英語の「Hello」に代わる言葉として考えられたという説などがあり、資料によって説明には違いがあります。
そのため、
「この人が『もしもし』を発明した」と一人に決めるのは難しい
と考えておいたほうがよさそうです。
確かなのは、日本で電話が普及し始めた明治時代に「もしもし」が電話の呼びかけとして広がっていったことです。
(参考サイト:国立国会図書館 レファレンス協同データベース)
なぜ「もし」ではなく「もしもし」と2回言うの?
「もしもし」が「もうしもうし」から変化した言葉だとすると、もう一つ疑問が出てきます。
なぜ「もし」1回ではなく、
「もしもし」
と2回繰り返すのでしょうか。
もともと「もうしもうし」「もしもし」は、相手の注意を引くために使われていた呼びかけの表現です。
現代でも、
「ねえ、ねえ」
「ちょっと、ちょっと」
のように、呼びかけの言葉を繰り返すことがあります。
「もしもし」も、電話だけに限定された言葉ではなく、相手に呼びかける言葉として使われてきました。
現在では電話で使う印象が非常に強くなりましたが、辞書にも「相手に呼びかけるときの言葉」と「電話で話し始めるときの言葉」の両方が掲載されています。
(参考サイト:コトバンク)
「もしもし」は電話専用の言葉ではなかった
現在、「もしもし」と聞けば、ほとんどの人が電話を想像するでしょう。
ところが、もともとは電話専用語ではありません。
たとえば昔なら、
「もしもし、そこの方」
というように、目の前にいる人への呼びかけにも使われました。
今でも少し古風な表現として、
「もし、そこの人」
などと言うことがありますね。
つまり「もしもし」は、
人への呼びかけ
↓
電話で相手を呼びかける言葉
↓
電話といえば「もしもし」
という流れで、電話のイメージが強くなっていったと考えられます。
(参考サイト:コトバンク)
今でも電話では必ず「もしもし」と言う?
日常の電話なら、今でも「もしもし」は普通に使われています。
家族や友人から電話が来たとき、
「もしもし?」
「もしもし、今大丈夫?」
と始める人は多いでしょう。
ただし、仕事の電話では少し事情が違います。
会社などでは、
「お電話ありがとうございます。○○株式会社です」
「いつもお世話になっております」
などと名乗ることが多く、「もしもし」を使わないこともあります。
だからといって「もしもし」が間違った日本語になったわけではありません。
電話で相手に呼びかけたり、通話がつながっているか確認したりするときに使う言葉として、現在も辞書に掲載されています。
「もしもし?聞こえますか?」
という使い方は、まさに昔から続いている「相手への呼びかけ」なのです。
(参考サイト:コトバンク)
英語の「Hello」と「もしもし」は同じ意味?
電話で使う場面だけを見ると、
日本語の「もしもし」
英語の「Hello」
は似ています。
ただし、言葉の成り立ちは異なります。
「もしもし」は日本語の「申す」に関係する呼びかけの言葉が変化したものです。
そのため、「Hello」を日本語に直訳したら「もしもし」になった、という単純な関係ではありません。
電話という新しい道具が日本に入ってきたとき、日本人がもともと持っていた呼びかけ表現の中から「もしもし」が電話にも使われるようになった、と考えるほうが自然です。
電話という機械は海外から入ってきても、そこで使う言葉は日本語らしく変化していったわけです。
「もしもし」は意外と歴史のある日本語だった
電話に出るとき、何気なく使っている「もしもし」。
その正体は、電話のために突然作られた言葉ではなく、「もうしもうし」から変化した呼びかけの言葉でした。
さらに、日本で電話が使われ始めたころには、男性交換手が「おいおい」と呼びかけていたという記録もあります。
そこから「もしもし」が広まり、現在ではすっかり電話を象徴する言葉になりました。
電話機は、
黒電話
↓
固定電話
↓
携帯電話
↓
スマートフォン
と大きく変化してきました。
ところが、電話の最初に言う「もしもし」は100年以上たった今でも残っています。
最新のスマートフォンを手に持ちながら、明治時代から続く言葉を使っている。
そう考えると、「もしもし」という何気ない一言もちょっと面白く感じられますね。
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